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ブーゲンビリア慕情 |
これは、私が南の国の、王家の森にあるお寺のトアンという年老いたお坊さんから聞いた話です。
昔々のことでした。ある村に、マイというそれは美しい娘がいたそうです。彼女があらわれるとまわりがぱっと明るくなり、かすかにさわやかな花の香りがするほどだったそうです。それは、ちょうど森のおくの高い木に咲いているランの花のようだったそうです。 心のやさしいマイはだれからも愛され、村人はほこりに思っていました。そんなマイですから、ぜひマイと結婚をしたいと思う村の若者も多く、また近くの村からも、たくさんの若者が一目でもあいたいと集まってきました。 村一番の金持ちの息子は、たくさんのプレゼントを用意し、マイの気を引こうとします。村で一番かっこいいと思っている若者は、せいいっぱいオシャレをしてマイの前にあらわ結婚を申し込みます。しかし、マイは、やさしくほほえむだけでそれ以上の返事はありませんでした。 マイの家に、タイという若者がはたらいていました。お母さんが重い病気で長くわずらっています。タイは、お母さんの薬を買うためにお金をたくさん借りなくてはなりませんでした。タイは借りたお金を払うためにマイのうちではたらいていたのです。タイはそんな自分の生活を気にもせず、お母さんが元気になるために一生けんめいはたらきました。 マイは、そんなタイのやさしさが好きで、いつしか二人は愛しあうようになりました。 月明かりのヤシの木の下で、よりそう二人の姿が見られます。湖に浮かんだ舟の上で楽しそうに語り合う二人の声が聞こえてきました。美しい花の咲いている森のかげで、タイとマイは幸せな時間をすごしていました。大きな木の枝に、真っ赤な蘭の花が咲いていました。 ふと、見上げあげて、その花に気づいたタイは、必死に登って摘んできました。その花を髪に飾ったマイは、天女のようでした。タイはうっとりとその姿を見ているのでした。 二人が結ばれることははかないい望みと分かってはいるのですが、それでもこうしているときは幸せでした やがて、そんな二人にお父さんが気づきました。、マイのお父さんはは、使用人で、貧乏なタイと、村一番の美しい娘を結婚させる気はまったくありませんから、喜ぶはずがありません。 だから、二人のこの幸せは長くは続きませんでした。マイがタイのような男とあっているとよい結婚相手がいなくなると心配したマイのお父さんは、二人があうことをきびしく止めたからです。 マイは家から出ることも自由にできなくなりました。 「一度でいいからタイに会わせてください。」 「だめだ、あんな貧乏人は、おまえにはふさわしくない。私が、もっとすばらしい婿を探してやるからタイとはもう会うのではないよ。」 と、お父さんは、椰子委言葉だが厳しく言い渡すのでした。 でも、タイに一目あいたいという思いは募りますが、お父さんの監視が厳しく、あうことができません。悲しみの中に日がたっていきます。
とうとうマイは失意の中で重い病気になってしまいました。立ち上がる力もなくベッドに寝たきりになってしまいました。タイとすごした楽しい思い出が浮かんでは消えます。森の美しい花や、小鳥のかわいい鳴き声とともにすごした時間がなつかしく思い出されます。 タイは、そんなマイの様子を聞くと心配でたまらず、森でつんだたくさんの花を持ってお見舞いに行きました。マイの髪に飾った思い出の大きなランの花もつんできました。 玄関に出てきた父親は、 「何をしにきた。ここはおまえのような貧乏人のくるところではない。帰れ、帰れ」 と、どなりつけました。 しかたなく、タイが手にしていた花束を、 「では、せめてこれだけでもマイさん届けてください」 とさしだしました。 ところが、父親は、 「なんだこんなみっともない花束なんか」 と地面に投げ捨てふみつけてしまいました。
こうして、父親の仕打ちの前に二人があえないままに日が過ぎていきました。 マイの病気がますます重くなりました。 苦しい息のもとで、お母さんに、 「私は、ずっと美しいままでいたいの。そして、タイさん以外の人に私はふれてほしくないので、そんな花に生まれかわりいつまでもタイさんのことを愛しつづけます。」 と自分の思いを伝えながら、静かに息を引き取りました。 マイのタイを思う気持ちのはげしさに気づいた父親は、二人が会うことをゆるさなかった自分をせめましたが、いまさらどうしようもありません。せめてものつぐないにと、マイの想いがかなうよう、毎日、森の近くにあるお墓に行って祈りました。 やがて、マイのお墓に一本の木が育ちあざやかな花をたくさん咲かせるようになりました。咲いた花は散ってもその色を失うことがなく、美しくあざやかなままです。散った花が、マイのお墓の上一面にあざやかな花がおおいました。 父親が、その花を一枝えだおり取ろうとすると、鋭いトゲがひっかきます。それは、 「私にふれないでください。私の心は、いつまでもタイさんといっしょです。」 とうったえているようでした。
いつまでも変わらない花は、紙で作ったように見えます。人々は、マイがこの花に生まれかわったのだといい、「紙の花」といって大切に見守りました。
語り終わった老人の目は、心なしか後悔の色が浮かんでいました。 今でも、ブーゲンビリアとして知られているこの「紙の花」は、王家の森を美しく彩っています。
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